読書メモ。2025年63冊目。
『スクラムガイド拡張パック』を読んでの感想となります。(2025/9/8記載)
本の概要
スクラムガイド拡張パックは、 2020年版スクラムガイド の包括的な副読本として、現代の複雑なプロダクト環境を歩むプロフェッショナルの手助けとなるべく作成された。複雑性・プロダクト思考・仕事のシステム的捉え方・リーダーシップについて、追加のガイダンスを提供することで、スクラムの核となる原則の理解を深める。同時に、経験主義と自己管理というスクラムの精神に忠実であり続ける。これはスクラムガイドの改訂ではなく、現代のチームが長期的かつ価値駆動型のデリバリーを実現するための戦略的な補足である。
引用:
動機
- スクラムを実践する上で拡張パックを読むべきであると考えていた。
- 先日の日本語訳披露宴で話し合われた印象だけでなく、自分で読み込むべきと考えていた。
- スクラム祭りの資料を書きながら改めて頭に入れたいと読みました。
披露宴参加時の記録
本書からの学び
個人的にスクラムガイドの良さはその抽象度の高さにあると考えていました。
重要な部分だけを定義し、細かい部分は各コンテキストに委ねるからこそ、スクラムを実践する人間がオーナーシップを持って取り組むことができ、スクラム以外の知見も適応しやすいのではと考えていました。
今回の拡張パックはそのスクラムガイドに具体性を加えたものであると理解しています。
その背景には、スクラムチームのフィーチャーファクトリー化があると理解はしています。
抽象度が高いフレームワークを適用しても実践者のコンテキストに強く影響を受けることから、スクラムが本来実現できる価値を十分には果たせなかったのではと考えています。
そのため、拡張パックにはアウトカムに対する言及が多く登場している印象があります。
開発に対して、作ることだけではなく、使われることを意識することが求められる時代の希求も反映されていると理解しています。
また、AIについての言及も多くあり、それが拡張パックを作成した第二の背景と理解しています。
現在のバージョン「v2025.6」では、プロダクトオーナーとスクラムマスターが人間でなければならないと言及されているのに対し、プロダクト開発者は人間でも自動化された存在でもよい、少なくとも1人のプロダクト開発者は人間であるべきであると記載されています。
AIに対する期待を感じました。
アウトカム、AIが拡張パックに追加された大きな要素と考えた場合、個人的には今までのスクラムガイドでも実践者が採用できる(すべき)考えであり、改めてスクラムガイドとして定義すべきものだったのかは疑問を持ちました。
ただ、多くの方が言及されるように、拡張パックが数多くの事例のひとつとして捉えると違和感はありません。
いずれにせよ、拡張パックを読むことで、プロダクト思考とAIに対する時代の要請を改めて感じました。
また、追加された内容にも学ぶの種は豊富にあるため、学習し実践に繋げます。
忘れたくないメモ
本書で特に印象に残ったポイントを振り返ります。
経験主義的アプローチ
「既知」と信じられているすべてのことは、市場やステークホルダー (顧客を含むがこれに限定されない)を含めて、間違っている可能性がある。期待、ニーズ、要求といったものは時間の経過とともに現れたり薄れたりし、相対的な重要性や緊急性も変化する。経験主義的アプローチは仮説を検証し、検査と適応を行うためのメカニズムを提供する。
小さい単位での検証を繰り返す重要性を改めて学びました。
無名の質
自己管理 (47) がトップダウンで設計されるものではなく、適切な環境の中で発見されるものであることを認識している。目的意識があり、一貫性があり、生き生きとした環境。これは Christopher Alexanderの「無名の質」 (39) を反映している。 つまるところ、スクラムは創発を排除すべきリスクとしてではなく、プロダクト開発における卓越性のために育むべき力として扱うのである。
目的・一貫性・生き生きとした環境での有機的な取り組みこそが創発に繋がるイメージをしています。
非階層的な組織構造
組織構造だけでなくパワーバランスも非階層的に保つことができるように取り組みたい。自己管理スクラムチーム (49) と個人の自己管理とを混同しないこと。シームレスな相互作用こそが、優れたチームによる創発を可能にする。非階層的な組織構造のもとでチームの自律性を促進し、意思決定の効率化を図ることは、スクラムチームが自己管理を向上させるのに役立つ。
すべての仮説は間違っている可能性がある
効果的なスクラムの適用は、問題や機会を提示するステークホルダーとそれに取り組む人々の間の距離が縮まり、ゴールがより具体的で意味のあるものになり、価値を迅速かつ頻繁に届けられるようになる。ステークホルダーは何を (What) やどのように (How) について誤解していることがある。一方でスクラムチームは誰 (Who) が影響を受けるかについて誤解していることがある。約束を守ることや間違ったステークホルダーに仕えることよりも検査と適応に価値を置くべきである。すべての仮説は間違っている可能性がある。スクラムチームのフィーチャーファクトリー化を避けるためには、問題や機会を提示するステークホルダーとそれに取り組む人々の間の距離を縮めることが重要と考えています。
できればもっと早くアウトプット完成の定義に準拠させる
スクラムチームは、スプリントゴールの達成とお互い助け合うことを確約する。確約とは、スプリントゴールに向けた関連作業を、遅くともスプリント終了時までに、できればもっと早く、アウトプット完成の定義に準拠させることである。また確約とは、価値実現を通じて、望ましいアウトカムに近づいていくことでもある。
スプリントの終わりにPBIを仕上げるという思考ではなく、もっと早く仕上げることが重要という思考が重要だと考えています。スプリントの終わりに合わせると思考が固まり、早く仕上げると余裕が生まれるイメージをしています。
プロダクトオーナー
プロダクトオーナーは、勇気や謙虚さを持ち、周囲と相談したり協力したり、ときには建設的な意見のぶつかり合いを通じて、ここ(Here) と今 (Now)と、予想される未来(そこ (There) とその時 (Then)) (148)の間のトレードオフを上手く扱う力が求められる。
プロダクト開発者がプロダクトオーナーの良き相談相手、協力相手でありたい。
事前に定められた目的地
スクラムの適用には方向性があるが、事前に定められた目的地はない。変化とは創発的なものであり、それゆえ予測できない。好奇心は、方向性を持った上で、感じる・聴く・学ぶ・適応するというパターンを可能にする。関係性を育み、多様な視点を理解し、語られていないことや起こっていないことに耳を傾けることが重要である。変化は困難だが、やりがいのある作業である。
スプリントのなぜ (Why)
プロダクトオーナーは、プロダクトの価値と有用性を今回のスプリントでどのように高めることができるかについてのアイデアを提案する。次に、スクラムチームが協力して、プロダクトゴールに向けてそのスプリントにはなぜ価値があるかをステークホルダーに伝えるスプリントゴールを定義する。スプリントゴールは、スプリントプランニングの終了までに確定する必要がある。
プロダクトの価値と有用性を具体的にスクラムチームで共通認識を持てることが重要だと思いました。また、プロダクトオーナーは提案するのであって、指示をするのではないこと重要に感じました。
開発者は一日を通じて頻繁に話し合う
プロダクト開発者がスプリントゴールやプロダクトゴールの文脈においてスプリントの計画を調整するのは、デイリースクラムのときだけではない。プロダクト開発者は、より詳細な議論をするために、開発者は一日を通じて頻繁に話し合う。デイリースクラムだけでチームの同期をするのではなく、必要なタイミングでいつでも同期を取れるチームが柔軟に状況に対応ができると考えています。だからこそ、デイリースクラムは焦点を絞って15分程度のMTGにすべきなのだと理解しました。
参考
スクラムガイド
https://scrumguides.org/docs/scrumguide/v2020/2020-Scrum-Guide-Japanese.pdf