勉強会に参加した感想を纏めます。

イベントの概要
開発現場は今、かつてない変化のうねりの中にあります。
文化と人に根ざした「アジャイル」と、加速度的に現場に変化をもたらす「AI」。
この2つの潮流を、どう捉え、どう共存させ、どう活かしていくのか――。本イベントでは、日本にアジャイルを広めた先駆者・平鍋 健児氏と、自律的なスケーリングフレームワーク「FAST」を組織で実践する傍ら、自らもアジャイル×AIの融合を模索するログラスCTO・伊藤 博志氏が登壇。
開発組織づくりやカルチャー、最新技術との向き合い方について、事前テーマと参加者からのリアルな質問をもとに対談形式で深掘りします。
対談後は、オフライン限定の懇親会も開催予定。
参加者同士の交流や、登壇者とのカジュアルな会話も楽しめます。アジャイルの「今」と「未来」に触れたい皆さまのご参加をお待ちしています!
<対談テーマ(予定)>
- アジャイルとAIはどう共存できるのか?
- アジャイルにおけるAI活用の可能性
- ログラスが取り組むFASTの現在地
- アジャイルの根幹となる組織・カルチャーづくり
引用:
イベント参加の背景
- 生成AIがアジャイルにもたらす影響についてまだイメージがつかないでいる。
- ログラスさんの発信にいつも大きな刺激を学びを頂いている。
- 平鍋さんといとひろさんのお話をお聞きしたくて現地参加を…!!
平鍋氏×伊藤氏 対談
メモ
・平鍋さん
自己紹介。
日本の企業とソフトウェア産業とは受発注関係がある。それだとうまくいかない。
どうしたらうまくいくかを考えたくてアジャイルをやっている。
AgileJapanを始めたころは鳴かず飛ばずだった。
今はビジネスもアジャイルに意識を持っている。
何年か前から日本でも大規模アジャイルが扱われている。
大きな会社はフレームワークを買って使っている。
もともとアジャイルはチームベース。チームがうまくいかないのに大規模になってもうまくいかない。
フレームワークを使うのはいいが、フレームワークから考えるてもうまくいかない。
チームがうまくいってから、拡張していくのが良い。
FASTについて
ログラスはFASTを昨年から取り入れている。流動性を大事にしているフレームワーク。
型(フレームワーク)を持ってきても、うまくいかないと思っている。
創業期からスクラムでのチーム開発をやってきた。
いとひろさんの入社頃はエンジニアが15名で3チームで機能ベースのチーム(フィーチャーチーム)で開発していた。
機能チームで開発をしていると機能が最適化される。当時は機能を拡張するだけでも顧客に喜ばれていた。
ただ、組織と機能が拡張していくにあたって、顧客に対して機能群のワークフローをもとに価値を提供していく必要があった。
そのうえで、それまでの機能チームだと、チームを跨いだ連携が難しくなっていった。
なぜ他のフレームワークではなくFASTを選んだか。
チームが安定していないことを前提に置く必要があった。
FASTは流動性を前提にしている。解決したい問題に対しても最適だった。
ハードルは高く感じた。日本でほかに誰もやっていなかった。
ただ、ログラスはTechValueとしてUpdate Normalを掲げている。
このValueから考えると難しいことにチャレンジするのは当たり前だった。
参考:
ログラスがスケーリングアプローチFASTを導入した背景#アジャイル_AI pic.twitter.com/eSdfch2DSh
— Tomoka Nagai🐳 (@tomoka_nagai) 2025年7月17日
FASTはFluidというが、チームはあるのか?
ビッグピクチャを共通目的とするコレクティブという大きな枠組みがあり、その中がFluidの状態となっている。
ただ、Fluidであることが必ずしも良いわけではなく、自分たちで最適な状態を調整する必要があった。
FASTには規定されていることも少なく、自分たちで決めていくことも多かった。
FASTは生命体に近い感じがする。統制が難しい。
ゴールに向かっての各自の自発性と胆力によるコミットメントが求められる。
軽くやると火傷するリスクもある。
FASTと似たことをしているチームも増えている。
生成AI
・平鍋さん
野中さんは生成AIをもとにSECIモデルを説明していた。
形式知になってしまったら、生成AIのものになる。
暗黙知と形式知の接続はまだ充分ではない。まだ語られていないことは生成AIにはできない。
逆に、語られたことは生成AIにできる。
まだ言葉にならない集団の知識は最後まで人間に残る。
・いとひろさん
2023年頃にChat-GPTとスクラムをしていた。
自分では何もせず、スプリントゴールまで行きついた。
生成AIはプロセスから学びを得ている。
SECIモデルでの暗黙知*暗黙知もプロセスの中で実現している。
・平鍋さん
生成AIは言葉ならいける。
言語化されていない人間の五感はまだ扱えない。
・いとひろさん
生成AIと人間との対話は生成AIの暗黙知に繋がっている気がする。
ただ、AIから人に向けた暗黙知の形式知化の発露が難しそう。
SECIモデルの価値は人間にもたらされてこそインパクトがある。
・平鍋さん
生成AIとの暗黙知*暗黙知の取り扱いをどうすれば良いか。
今は暗黙知における生成AIとの接続は切れている。
人間が身体を使ってディスカバリしていく必要がある。
AIは人間が使わない言語を使って考える。
人に説明するために人間の言葉を使っている。
用語を統一すると人間とのやり取りがもっとスムーズになる気がする。
組織・カルチャー
・平鍋さん
スクラムそれ自体はチームベースである。
スクラムがスケールしていくと、知識の流通路を考える必要が現れる。
知識を内部に蓄えること、それと共に忘れることが重要になる。
人と人との間を工程を跨いで人で知識をつなぐことが重要である。
身体が知識の運び手である。
参考:
・いとひろさん
ログラスでは出社を推奨している。チームで同じ場を共有することを重要視している。
FASTでは暗黙知をチーム内で共有していくことが自然と起こるようになっている。
議論の場でのコミュニケーションを通して、知の共有、活性化が推進される。
・平鍋さん
本田宗一郎は、自分が作ったものをユーザが使っている姿を見ることを推奨していた。
エンジニアも含めて一緒に見ることにより、暗黙知を溜めていった。
それを持ち帰り、会話を通すことで、暗黙知⇒形式知にしていった。
・いとひろさん
ログラスでは、お客様の一次情報を大事にしている。
ユーザーや商談の場を見ることができる機会を用意している。
暗黙知に対して、顧客と一緒の場にいて共感ができることが重要となる。
自分で感じる場がAIの台頭で無くなっていくと。知の創造が少なくなる。
・平鍋さん
熱量は難しい。人にはヒストリーが重要となる。
・いとひろさん
人間が勝手にAIから熱量を感じることは起こるかもしれない。
人間はロボットが人間らしく振る舞うのを当たり前と考える文化がある。
・平鍋さん
人間がAIに勝手に感謝を伝えてトークンを使っている。
Q&A
AIは形式知しか学んでいない気がするが
・平鍋さん
そう思う。
・いとひろさん
コンテキストウィンドウ内でのプロンプト内でのやり取りは暗黙知を学んでいるフェーズはある気がする。
AIを使った場合アジャイルのフレームワーク使う必要ある?
・いとひろさん
人間はアジャイルで考えたいが、AIが入ると壊れるところがある。
アジャイルフレームワークは人間の速度に合わせて作られている。
混乱が起きてくる気がする。
・平鍋さん
速度感が違う。
AI同士の掛け合いを増やさないとうまくいかない気がする。
レビューが追い付かない。
FASTうまくいっているか?
・平鍋さん
うまくいくの定義は何か。
・いとひろさん
FASTでうまくいっていないことがあるが、人数の増加が原因だとも思える。
ただ、SECIモデルを回せるフレームワークだと思っているし、それがうまくいっているところがある。
それがうまくいっていると判断が難しい。
・平鍋さん
やってみないと、進んでみないと分からない。
そうした上で、なぜ進めるかで考えると、FASTは悩みながら進んでいけるものだと思う。
オフライン限定懇親会
交流をさせて頂きました皆様ありがとうございました。
改めてコミュニケーションはフィードバックであることを学びます。
今日のテーマもあり、『なぜイノベーションは起こらないのか』の訳者今井さんと、ログラスおおひらさんと会話させて頂いた内容が印象に残っています。
『なぜイノベーションは起こらないのか』について、大局的に見ると、借りてきたフレームワークを利用してもうまくいかないという話なんじゃと思い、興味深かったです。
フレームワークという最大公約数に向けた回答に当てはめる前に、まずは対象を観察して真因を捉えること、暗黙知を育てることが重要と改めて思いました。
暗黙知のないところに型を用意しても機能はしない。
なぜイノベーションは起こらないのかwww.maruzenjunkudo.co.jp
また、先日のQaaSでの、生成AIによってテストの効率も変わっていく中、人が実際にプロダクトを手で触ることの重要性が増していくというおおひらさんの言葉が印象に残っていました。
人が手でプロダクトを触ることにより暗黙知を溜めていくというお話を聞き、改めてバグバッシュのような機会を、もっと実感を伴う価値のある場としていきたいと思いました。
感想
本日1日を通してSECIモデルの暗黙知の重要性を改めて考えることができました。
体験を通した身体での学びを言語化せずとも大切にしたいと改めて思いました。
そうした考えは、前回のProduct Engineering Nightで紹介された、MoDの「デッサンから入ることで観察眼を養い、デザインを学ぶ」というアプローチとも通じるものがあると思いました。
人は手を動かすことに向かいがちだけど、その前にもっと暗黙知を育てる必要があるということな気がしています。
そのうえで、FASTのようにチームという単位で体験を蓄積することが重要であると思いました。
ひとりで暗黙知を言語化するより、違う視点、違うコンテスキストを持つ者同士で言語化した方が形式知としても豊かになりそう。
個人としてはまだ生成AIとは切り離して体験を通した暗黙知を、個人としてもチームとしても積み重ねていきたいと思いました。
そして、それとは別に、生成AIの影響は不可避のため、自分たちの知識の醸成に間に合う形で(もしくは後押ししてもらう形で)利用していくことが重要とも思いました。
今後ますますエンジニアとしての知識の醸成を持続していくかが重要になると思いました。